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2020-12-01
歴史への感謝を忘れずに
市民に喜んでもらえる新庁舎へ

平成27年度より建て替えプロジェクトがスタートした大和郡山市の新庁舎。前回の議長インタビューに続き、今回は工事を請負う淺沼・藤本特定建設工事共同企業体より「株式会社 淺沼組」の現場代理人、大北勝也氏とプロジェクトの中核を担う大和郡山市総務課庁舎建設室長の斎藤和久氏の対談が実現。現庁舎60年の歴史への誇りと敬意、新しい時代にふさわしい市役所のあり方や災害に強い免震構造のことなど、たっぷりと語り合いました。

大和郡山市新庁舎建設工事 現場代理人 大北 勝也(おおきたかつや)

高校時代、測量事務所でのアルバイトをきっかけに、建築の道へ進むことを決意。1993年に(株)淺沼組に入社し、大和高田市立病院や、枚方寝屋川消防本部庁舎など多くの施工を手がけてきた。物件全てに思い入れを持ち、自身25件目となる今回の工事でも、市民の皆様の安心安全な暮らしのために力を尽くしたいと意気込む。

大和郡山市 総務部 次長 総務課 庁舎建設室 室長 斎藤 和久 (さいとうかずひさ)

1989年に大和郡山市に入庁。事業部門や教育福祉部門等幅広く仕事をこなし、2018年4月より庁舎建設室長として、本業務に携わることとなる。「市民サービス」の拠点となる市役所。これからの時代をにらみ、将来的な役割を見据えた庁舎となるよう取り組んでいる。

たくさんの意見を映しながら、
これからの庁舎の役割を考える

工事を進める中で意識していることはありますか?

斎藤ー上田市長がインタビュー内でも語っていましたが、新庁舎の建設にあたり、大和郡山市のシンボルとしていくつもの時代で歴史を刻んできた現庁舎への感謝の気持ちを忘れてはいけないと思っています。昨年、城の石垣を使いプロジェクションマッピングを開催しましたが、とても好評でした。現庁舎への想いを込めて、最後にお別れセレモニーでプロジェクションマッピングをもう一度やるのもいいかもしれません。

大北ーとても素敵なアイデアだと思います。昔ながらの風情を根強く残す大和郡山市は「金魚が泳ぐ城下町」と親しまれていますので、市民の皆さんは、新しいものばかりに飛びつくのではなく、古き良き時代のものはちゃんと残しつつ、新たなシンボルを作って欲しいという思いを持つ人が多いのではないでしょうか。私たちも建設作業、説明会などを通じて皆さんの声を聞く中で郷土への愛を強く感じますね。

斎藤ー今回、庁舎の最も重要な役割である「市民サービス」の拠点として何が必要なのかを追求するために、市役所で実際に働いている職員の皆さんへ聞き取り調査を行いました。「会議室が少ない」、「駐車場が足りない」、「子育て中のママに優しい施設を」など、様々な観点から要望をいただきました。
また、これから電子化が進むにつれ、将来的には書類の申請などで市役所を訪れる機会は減るかもしれない。だからこそコミュニティスペース、市民の憩いの場としての可能性を考えたいという意見もありました。市役所の職員だけでなく、議会とも議論を重ね、調整しながら「大和郡山らしさ」を感じる理想の庁舎像を一致団結しながらまとめることができました。
何代にも渡ってここで暮らしている人はもちろんですが、新たに大和郡山市に移住してくれた人、未来を担う子どもたち、それぞれの意見を一つひとつ大切にしながら、新しい庁舎をつくり上げていきたいと考えています。

災害に負けない庁舎をつくり
市民の防災意識を高めたい

新庁舎の災害対策について、お二人の考えを教えていただけますか?

大北ー地震や水害などの自然災害は、いつ、どこで起きてもおかしくありません。今回の新庁舎は災害に強いことを重要視しています。奈良県には、法隆寺をはじめとする神社仏閣が数多くありますが、その姿を今に残すことができているのは、昔の人々が当時の知恵や技術を駆使して丈夫な建物をつくりあげたからだと思います。かつての阪神淡路大震災や東日本大震災、昨今の大雨被害で防災についての意識は高まりつつあります。今回、新庁舎への建て替え工事をきっかけに、我々が考えられる施策をすべて注ぎ込んで、市民の皆さんに揺るぎない安心と安全をお届けできるよう努めていきます。

斎藤ー阪神淡路大震災を境に、日本の建物の構造基準はかなり厳しいものへと変わりました。いくつもの災害を通じてデータが豊富に揃ってきた今だからこそ、クラッシュアンドビルドを繰り返すのではなく、法隆寺のように後世に残る建物をつくり上げましょう。そのためには今だけでなく、50年、100年という長い目で考えることが大切。万が一、地震や自然災害が起きたときでも「しっかり準備していてよかった」と言えるように備えていく必要があります。庁舎の安全性はもちろんですが、それだけでなく市民の皆さんへ防災意識を啓蒙していきたいと考えています。

作って終わりではなく、
皆で育てていく庁舎に

新庁舎にどのようなビジョンを描いていますか?

斎藤ー私は新庁舎の完成がゴールではなく、そこからがスタートだと思っています。維持管理はもちろん、多くの人が集う場所としてスムーズに機能するように、空間だけでなく、文書の管理、清掃のしやすさなど、今までとはひと味違う「これからの市役所」のカタチが生まれると信じています。職員たちは全員、新庁舎への思い入れが強いので、積極的に意見を述べたり、行動を起こしてくれることを期待しています。

大北ー最近では「ホコリがたまりにくいようにする」「整理収納しやすくする」などのニーズに応える空間づくりも進化しています。コロナ禍の中で、新しい生活様式が求められる今、ウイルスの付着防止や、除菌を意識した清掃など、色々と考える必要があると思います。

斎藤ー施工に関わる方から、時代に応えるいろんな提案をいただけるのは本当に嬉しいですね。「はいこれ、言ったとおりにしましたよ」だけでは寂しい。「ここはこうしてと言われましたが、こちらの方がいいですよ」というプロならではの意見が、より良いものへとつながります。今回、積極的にアドバイスをいただきながら進めているので、すごく助かっています。

大北ー何はともあれ、そこで働く皆さんにとって、働きやすい環境であることはとても重要です。市役所に限らず民間企業のオフィスでも同じだと思うのですが、働く環境が快適であれば、お客様への対応もスムーズになり、作業の効率アップも期待できます。今回、施工を進めるにあたり、「市民の皆さんに喜んでもらえるような仕事ができる場所」という想いのもと、市役所の担当者と「ここにあれが必要じゃないのか」、「こちらの動線の方が迷わないんじゃないのか」など、常に施工会議の中でも、この点については重ねて議論させていただいております。

斎藤ー現在、杭・基礎工事の最中です。市民の皆さんには、騒音などたくさんのご迷惑をおかけしているかと思います。ご理解、ご協力をいただいている近隣住民の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。これからも淺沼・藤本特定建設工事共同企業体の皆さんと安全面や環境面についてしっかり配慮をしつつ工事を進めていきたいと思っています。大和郡山市の新たなシンボルともいえる新庁舎の完成に向けて、一丸となって頑張りましょう!