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2021-04-16
安心な未来をつくる
最新の地震対策「免震構造」

昨今の地震被害から、地震に強い建物構造「免震」が注目されるようになってきました。実際に、マンションやオフィスビルはもちろん、公共施設など、多くの建物で用いられ、大和郡山市の新庁舎にも導入されています。今回は、最新の地震対策「免震構造」について詳しくご紹介します。

「免震構造」は、今最も注目されている地震対策工法

一般的に、地震対策のための三大工法として、「耐震」「制震」「免震」の3つが挙げられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

耐震:梁・柱・壁・ブレース等により建物を硬くし地震エネルギーに対抗し、揺れに耐える
制震:制震部材により上部建物へ伝わった地震エネルギーを低減させる
免震:免震部材により地震のエネルギーを受け流し、上部建物への揺れの伝わりを低減させる

3つを比べると、「免震」が最もメリットが大きく、「耐震」や「制震」とは異なり、建物の倒壊を防ぐだけでなく、建物内部のダメージも防ぐことができるという点がポイントです。そのため、地震大国日本で、今後主流となってくる建物構造だと注目を集めているんですよ。

免震建物の特徴・メリットとは

免震装置を導入した「免震建物」は、薄いゴムと鉄板(鋼板)を交互に重ねた「免震ゴム」が常に建物を支えます。普段はしっかりと建物を支え、地震が起こったときは建物を支えながら水平方向に柔軟に変形しながら、地震の揺れを和らげてくれます。

免震建物で利用される免震ゴムは、薄いゴムと鉄板(鋼板)を交互に重ね、しっかりと接着させています。地震の揺れを受け流すのはこの構造のおかげです。

免震装置を設置した免震建物には、揺れの軽減をはじめ、さまざまなメリットがあります。地震の揺れを小さくするので地震発生時でも落ち着いて行動が可能です。また、家財被害も軽減し、地震のあとすぐに日常生活を取り戻すことができます。また、家具が倒れたりして下敷きになる可能性も低いのもメリットですね。

実際に、免震構造を取り入れている建物では、地震の際に「物ひとつ落ちなかった」「震災時、一時的に地域住民の避難場所になった」「色々な行政から免震で助かった消防署として訪問希望があった」などの声がありました。

新築だけでなく、「免震レトロフィット」と呼ばれる技術を使うことで、既存の建物も地震に強い建物に生まれ変わらせることができます。実際に、大正3年に建造された「三越日本橋本店」では、免震レトロフィット技術を用いて、平成17〜20年にかけて建物の免震化が行われました。工事完了の3年後に発生した東日本大震災では、震度5弱の揺れにもかかわらず、被害はほぼゼロ。売り物のグラスが倒れることもなかったそうです。

安心・安全な未来をつくる免震建物

新庁舎に導入される免震装置は、ゴムと鋼板の積層タイプ「高減衰ゴム系積層ゴム(HDR)」と、天然ゴムを使用した「天然ゴム系積層ゴム(NRB)」との組み合わせで構成されています。設置性に優れ、建物だけでなく建物内部の精密機器等への免震効果も期待できるだけでなく、安定した復元力特性を持つ、両者のメリットを併せ持っているんですよ。

免震建物が登場して既に30年以上、採用物件は全国で4500棟を超えました(日本免震構造協会調べ)。今後も免震構造の施設が増えていくことが予想されます。地震や水害などの自然災害は、いつ起きるかわかりません。万が一、災害が起こった場合、免震ゴムを導入した新庁舎は、重要な災害対策の拠点となり、安心安全の要となりうると考えています。

新庁舎は、基礎部分に免震装置を設置。建物全体に免震効果を発揮する。